以前紹介した「SAPPOROぶらり手帖」を活用した市内のまち歩き。
皆さんは「SAPPOROぶらり手帖」をご存じでしょうか?札幌市内の観光関連事業に従事するメンバーが「サッポロコンシェルジュ」として作り上げた冊子&ウェブサイトで、札幌の新たな魅力が楽しめる一冊となっています。 kato 冊子[…]
前回は創成川イースト界隈を歩きましたが、今回は札幌市資料館などを中心とした「大通ウェスト」界隈をぶらり散策。
再び街歩き研究家・和田哲さんにガイドをして頂き、界隈の歴史や地名などの興味深いお話をたくさん教えて貰いました!
和田さんのお話を伺っていると、改めて札幌のことを知ってるようで知らなかったんだなあ…と再認識。そんな知って楽しい知識が満載の一日をレポートします!
集合場所は重厚な札幌軟石の建物「札幌市資料館」
今回のまち歩きの舞台となった大通ウェスト界隈。
聞きなれない名前かもしれませんが、こちらはサッポロコンシェルジュが新しく命名した呼び名です。
この周辺は札幌の中でも古い歴史を持つのに、なぜか特定の名前がついていない地域。
SAPPOROぶらり手帳を作るにあたって、大通の東端にある創成川イーストに対し西端にあるこの周辺を大通ウェストと名付けました。
集合場所の「札幌市資料館」は、元は裁判所だった建物。
大正15(1926)年に札幌軟石を使って建てられ、国の重要文化財にも指定されています。
「札幌軟石は約4万年前に今の支笏湖が大噴火し、その火砕流が遠く離れた札幌まで押し寄せたのですが、南区の硬石山などにブロックされ冷え固まってできたんです」と和田さん。
「また、玄関の上を見てください。裁判所だったことを示す証がありますよ」。
天秤と目隠しをした女神が彫られていますが、天秤は公平性を、目隠しは先入観を持たないという法の正義を象徴しています。
札幌市資料館はもちろん知っていましたが、彫刻には気づいていませんでした…
何気ない場所に新しい発見がありますね!
札幌最古の鉄筋コンクリートビルと碁盤の目の不思議
札幌市資料館から南に歩き、市電通りに出ると「このビルに注目です!」と和田さん。
「三誠ビル」は大正13(1924)年に建てられた、鉄筋コンクリート建築としては札幌最古の建物。
ちなみに、映画「探偵はBARにいる2」のロケ地でもあるんですよ!
そして「札幌の街は碁盤の目に作られたのですが、地図を見るとこの周辺から4度曲がっているんです」。
これには色々説があるそうですが、この境界となる札幌本府エリアを造った土佐藩出身の岩村通俊と石山通や山鼻屯田兵村に深く関わっていた薩摩藩出身の黒田清隆は仲が悪く、意思疎通ができずこうなったのでは?と推測していました。
札幌市電の旧線跡で、古地図と今の地図を比較
現在、南1条西15丁目で市電は南に曲がりますが、古くは真っすぐ円山公園まで続いていたそう。
和田さんが左手に持っているのは1950年の地図で、赤いラインで直進するルートと曲がるルートを示してくれています。
また、線路は西15丁目駅へと緩やかなカーブを描いていますが、昔は直角に曲がっていたのだとか。
「それでは小さな電車しか曲がれなかったため、昭和に入って西15丁目の斜め通りが新たに作られ、現在の形になったんです」と和田さん。
ユニークなお店がたくさんのspace1-15(スペースイチイチゴ)
南1条西15丁目から北上し、北海道知事公館を目指します。が、その途中で小路に入って少し立ち寄り。
「space1-15(スペースイチイチゴ)」は外観は普通のマンションですが、中はオシャレなカフェや雑貨店、レコード屋さんやクラフト工房などが入る個性いっぱいのスポット。
お目当てのお店のチャイムを押して中に入るという独特のスタイルで、20軒以上のユニークなショップがひしめく札幌の新名所です。
気になった方は、下記のページをご覧ください!
大通ウェストは様々な名前があった、名前のないエリア
北海道知事公館に到着すると「西区にある琴似をご存じかと思います。先住民族のアイヌの方々は、本来この辺りを琴似の語源であるコッネイ(kot-ne-i)と呼んでいたんです」と和田さん。
「当時琴似には地名が無かったのですが、琴似屯田兵村が作られそのまま琴似と呼ばれるようになったんです」。
さらに知事公館の中に入っていくと「桑園もご存じでしょうが、実はここが桑園だったんです。その証拠の石碑がコチラです」。
桑園という地名は元々、明治時代に養蚕のための桑畑をここに作ったことに由来します。
しかし、1924(大正13)年に桑園駅ができるとそちらに名前が定着し、この場所が桑園と呼ばれることはなくなったのだそう。
「ですので、この辺りは色んな地名があったのになくなってしまったエリアなんです。今回、大通ウェストという名前をつけましたが、これが定着してくれると嬉しいですね」。
近代美術館で小休憩、さらに西へと歩きます!
知事公館のすぐ西側には「北海道立近代美術館」があり、こちらで小休憩。
本当は中にも入る予定だったのですが、なんと設備修繕工事で休館中でした。
美術館から少し歩き北1条西20丁目の交差点で止まると、また和田さんからクエスチョン。
「北一条・宮の沢通はここで少しだけ曲がっています。それは何故でしょう?」
確かに地図で見ると、ここだけ変な曲がり方をしています。
それはここが札幌市と円山町の境だったため。
1916年の地図を見ると道が無かったのが分かります。
そして北海道神宮の参道と繋げようとしたところ、真っすぐにならなかったため現在の形になったのでした。
医療・福祉施設が集中する西20丁目エリアへ
西20丁目周辺には札幌市医師会を中心に社会福祉総合センターや視聴覚障がい者情報センターなど、医療・福祉施設が集中しています。
一つの地域に集約すると便利という理由はあるのですが、知られざるエピソードもありました。
和田さんが手に持つ写真の「小川直吉」翁は人情に篤い親分肌の人で、病人など生活に困窮した人々を自分の家に引き受け、自費で世話をしていました。
明治末期、身寄りのない病人などを助ける「札幌救護所」が大通西19丁目に開設されるのですが、それまでの実績もあり小川直吉翁に運営を任せました。
社会福祉総合センターなどはその跡地にできたもの。「小川直吉翁は顔写真も残っていないのですが、札幌の社会福祉の父とも言える偉人です」と和田さん。
円山エリアの「裏参道」入口でゴール!
今日のゴールとなったのは、円山の裏参道入口。
和田さんの背後にある道が裏参道なのですが、表参道(先ほどの北一条・宮の沢通)ができるまではこちらが北海道神宮への参道だったのだそう。
つまり裏参道も表参道ができたことによって地名が転じてしまった場所なのでした。
余談ですがこの日は「裏参道夏祭り」が開催しており、多数の出店が並んでいました。
ただ最高気温31.4度という札幌とは思えない猛暑日で、数km歩いただけでヘトヘト。
しかし大学生はやはり元気で、そのままお祭りを見に行ったグループもちらほら。
体力が全然違うなあ、と思った次第でした。
もう一度「SAPPOROぶらり手帳」をご紹介
「SAPPOROぶらり手帳」は今回の大通ウェスト界隈のほか、狸小路界隈やすすきの界隈など市内中心部7地域の街歩きルートをまとめています。
定番のスポットから穴場まで、約200ヶ所を紹介しているのでぜひご覧ください!
※当記事の内容は2023年7月25日時点の情報です。