小樽市民に古くから親しまれる「岩永時計店」。
その歴史をたどると、なんと120年以上前に開業したという由緒あるお店です。
小樽のまちと共に時を刻んできた老舗に、その歴史や長く続くワケ、そして時計の魅力を伺いました。
岩永時計店のなりたち
岐阜県から入植した岩永新太郎氏が時計店を開業したのは1896(明治29)年のこと。
元々は現在のJR南小樽駅近辺で質店を営んでいたのですが、一帯で大火事がありお店が全焼。
そこで当時最先端のアイテムだった時計を扱おうと転身し、堺町通りに店を構えました。
歴史をひも解くと、明治期の小樽はとても火事が多い街だったそう。
石造りの倉庫が多く建てられたのも、その被害から守るためだったと言われています。
上の写真は明治29年の毎日新聞に掲載された、岩永時計店の開業を知らせる広告。
「中央部に各種時計を扱っている事が書かれていますが、この中には腕時計がないことに注目です」と5代目社長を務める岩永尚己さん。
「腕時計が販売されるようになったのは、初代が時計店を開業した後から。なので当時販売していたのは懐中時計が中心です。この店がどれだけ古くからあるのかを示しているのかな、と思います」。
上記の広告を出してから3年後には、同じく堺町通りに店舗を新築。
当時の金額で1万円(現在の価値に換算すると7,000万円!)で建てた軟石造りの建物で、明治時代としては珍しいバルコニーがあるなど和洋折衷でモダンな造りです。
岩永さんによると「初代はとてもハイカラな人だったそうで、建物にもその性格が表れています。時計店を開いたのも、新しいもの好きな性格があったからかもしれません」とのこと。
この建物は堺町通りに残っており、現在は小樽オルゴール堂が店舗として利用。
1985年に小樽市の歴史的建造物に指定されており、北海道では珍しい屋根瓦やシャチホコ、洋風なデザインの柱や両開きの扉などに当時の雰囲気を残しています。
地元の人に愛される時計店
都通り商店街に店舗を移したのは2009(平成21)年のこと。
往時は丸井今井小樽店や夕張市にも店を構えていましたが、現在はこの一軒で営業しています。
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店内には腕時計のほか壁掛け時計や置時計、宝飾品などがずらり。
また、スイスのメーカー・ロンジン製の岩永時計店100周年記念モデルなども一緒にディスプレイ。
近年はスマートフォンなどで時間が確認でき、腕時計をつける人も減ってきています。
それでも取材中に近所の方が電池交換に訪れるなど、「ここに預ければ安心」とまちの人々に信頼されている様子が伺えました。
「長く続いて今も足を運んでいただけるのも、これまで誠実に対応してきたことが一番ではないでしょうか」と岩永さん。
また、腕時計の魅力について伺うと「電波式などはテクノロジーの塊ですし、機械式は精緻なパーツの結晶で、それぞれに良さがあります」。
「たとえばこれは日本のオリエントスターというブランドの機械式時計ですが、スケルトンになっていて中の機械を見ることができます。こういった中の構造だったり、ケースの削り方だったり、針の精巧さだったり…魅力はさまざまですが、語りつくせませんね」と感慨深く語ります。
ほかにも、内部のゼンマイの精巧さや最新の電波時計の機構など、語り始めると止まりません。
時計をいくつか見せて頂いたのですが、ディスプレイに戻す際に愛でるように丁寧に扱っているのが印象的でした。
自分も腕時計にはあまり興味が無かったのですが、お話を伺っているうちに引き込まれ、ひとつくらい機械式を持っておかないと…なんて思案中。
今度は取材ではなく、時計の相談をしにお店に伺おうと思います!
スポット概要
名前 | 岩永時計店 |
住所 | 小樽市稲穂2丁目9-8 |
電話番号 | 0134-33-8618 |
営業時間 | 10:00〜18:00 |
休み | 水曜 |
HP | https://iwanagatokei.co.jp/ |
バス停 | 「小樽駅前」から徒歩3分 |
行き方 | 【札幌駅から】「札幌駅前」から高速おたる号(のりば①)ほか ※高速おたる号望洋台経由は小樽駅前で停車しないため注意を ※バス停名からのりば地図が見られます |
※当記事の内容は、2024年3月19日時点の情報です。