中央バスが誇る、国内に数台しかないという代燃車バス「まき太郎」をご存じでしょうか?
北海道中央バスの創立50周年記念事業として造られた薪で動くバスで、現在も各種イベントなどでその姿をお披露目しています。
ボンネットバスならではのレトロでキュートな姿は、先日行われた「大ほっかいどう祭」や「北海道バスフェスティバル」でも大人気!
「いつごろ作られたんですか?」「どういう仕組みなんですか?」といった質問もたくさん寄せられました。
#大ほっかいどう祭 に薪バス #まき太郎 参上です??
— Notte.-ノッテ/北海道でバス旅 (@Notte_0701) August 19, 2023
写真撮影はもちろん、制服を着用して運転席に座ることもできますよ♪
[ライター:きょんさつ] pic.twitter.com/LhMwj36MFx
今回は、まき太郎ができるまでを紹介した中央バスグループ誌『ふれあい』の記事「代燃車物語」(1992年4月号~10月号)を再編集して復刻連載いたします。
薪バスのしくみや完成までの苦労など読み応えたっぷりの内容で、これを読めばまき太郎の全てが分かるハズです!
「バスの日」9月20日に発車オーライ(平成4年4月号復刻)
日本のバスの歴史の中で、戦中・戦後のガソリンが手に入らない時代に代用燃料車として木炭バスや薪(マキ)バスが活躍しました。
中央バスでは会社創立50周年記念事業のひとつとして「代燃車復元」を企画。
今秋(1992年)9月20日の「バスの日」の一般公開に向け着々と準備が進められています。
2月中旬には役員を委員長に札幌整備工場を中心とする復元準備委員会が発足し、薪バス復元を決定。
現在、3両の古い車のエンジンやボディーを見つけたところで、どのような形にするか設計図をつくるための資料を集めている段階です。
本州では神奈川中央交通が1981年に創立60周年を記念して薪バス「三太号」を制作。イベント用として神奈川県各地を巡回展示しています。
原爆の悲劇をつづった映画「黒い雨」にも当時のバスとして演出するなど現在も活躍中。
中央バスではこの三太号を参考に現地を視察し、早急に設計図を作る計画でいます。
マキバス・ルポ① エンジン・ボディー集め奮戦記
「代燃車をつくる」という話が持ち上がったのは1991年の10月。
早速、製作を手がける中央バス札幌整備工場では、10月中旬にはスクラップ屋を中心に部品集めに奔走。
スクラップ屋の横のつながりを頼りに調べてもらっていったところ、札幌整備工場職員の学生時代の友人が千歳で経営する会社から情報を得、早速工場長らが見に行きました。
型は昭和47年式、NTT(旧電々公社)の電源車として使用していたものらしく、発電機を搭載し、エンジンはディーゼル。12月7日に札幌整備工場に運びました。
これだけではまだまだ不十分。ガソリンエンジンが必要なのと、もっと古い型のボディー探しを続けることになりました。
空知工場からは消防車
暮れも押し迫る12月、空知工場の工場長から耳寄りな情報が入りました。
北空知の妹背牛(もせうし)町に昭和47年式ガソリン車で、以前は消防自動車として使われていた車を2台見つけたとのこと。1台からはエンジンを、もう1台からはボディーを購入。
通勤途中でボンネットバスを見つける
2月に入り、札幌整備工場の整備員が通勤途中、東米里にある廃車商会のスクラップ車の山から昭和39年式・ボンネット型のトラックを発見、もう1台ボディーがほしかったところに朗報でした。
しかし、駆け付けたところ売約済み。ガックリしたところに、同じ場所で運よく別のバスを見つけることができました。
おまけに昭和39年式で前のボンネット部分が古く、最初に千歳で見つけたボディーと合わせるとなんとか一台になりそう。2月13日には工場に運ばれ、だいたいの部品はこれでそろったことになります。
2月10日に準備委員会発足
ようやくここで専務から招集がかかり、「9月20日のバスの日に間に合わせるよう」準備委員会が発足しました。
まず、正規の図面を作れないことから現物合わせになることなどが報告されました。
次に車検の問題で、規制外のバスのため車検を取ることができず、公道での走行は不可。道運輸局に働きかけ、仮ナンバーを取れるようにしたいなど、これからの方針を話し合いました。
解体作業は合間を縫って
札幌整備工場では、昭和61・62年車の車両リフレッシュ(外板や内装の張替えなどの補修を行い、新車に近い状態にする作業)にかかっています。
そしてほかにもびっしり仕事が詰まっている状態。
その作業の合間を縫っての解体、復元になりますが、「ものを作ることは、楽しく、興味のあることです。時間をさいていいものを作っていきたい」と工場長自ら指揮をとっています。
実際の作業は板金班、エンジン班、シャシ(フレームや骨格の部分)班のすべての班がかかわり、札幌整備工場全員の手によって作られることになります。
以上、第1回の連載記事でした。
ここまではまき太郎を作るためのベース集めに奔走している段階。
次回の記事では、集めた部品を解体・再構築していきます!
\第2回の連載記事はこちら/
前回、まき太郎の素材となるエンジンやボディー集めに奔走した準備委員会。各地を奔走した苦労に偶然も味方して、昭和47年式の消防自動車や昭和39年式のボンネットトラックを入手できました。 \前回はこちら/ [site[…]
※当記事の内容は2023年10月2日時点の情報です。