エジソンの「キネトスコープ」やリュミエール兄弟の「シネマトグラフ」など映画装置の開発から130年余、映像メディアは人々に親しまれ、今日まで常に生活とともにあります。
そして機材の進歩もめざましく、矢のようなスピードで発展してきました。
一方で、ほんの15年ほど前まで現役だった機材がどんどんと過去のものとなっています。
それらアナログ時代の機材を集めた、入館無料の私設博物館が「札幌映像機材博物館」です。
館内に並ぶカメラや映写機、放送用VTRの数々は歴史を物語るとともに、自由に触れることもできちゃいます!
また、併設する「朱音珈琲」の自家焙煎コーヒーを味わい、じっくりと腰をすえて鑑賞することもできますよ♪
アナログ時代の映像遺産を無料展示
札幌映像機材博物館があるのは、バス停「平和通1丁目南」のすぐ目の前。
もともとは2015年から登別市で運営していましたが、2022年に札幌へと移転しました。
館主の山本敏さんは20代の頃から東京のプロダクションなどで映像カメラマンとして活躍。
テレビドキュメンタリーやCMの製作に携わってきました。
その縁があり、使われなくなった機材が手元に集まってきたのだそう。
館内にはフィルム式の映写機や50台以上のカメラ、テレビや映画用の編集機材に加え、西ドイツ製の人乗りクレーンといった代物まで展示されています。
「今はドローンもありますから、人が乗ってクレーンを使うことは無いでしょうね。ここで展示しているものはみんなデジタル化や機材の発達で使われなくなった、過去の遺物たちです」。
地デジ化以降、捨てられる日を待つ機材はさらに増え、集まる数も部屋に収まりきらないほどに。
「これだけの資料があれば展示として成り立つ、アナログ時代の遺産をさまざまな人に触れてもらえる場をつくろう」と博物館をオープンしました。
見て知って、触れて学べる博物館
「展示されているものの中で、特に古かったり貴重だというものはどれなのでしょう?」と質問すると「35ミリフィルムや16ミリ、8ミリなど機材によって尺度は違うのですが、貴重さで言えばこの9.5ミリのカメラでしょうか」。
箱から取り出したのは、フランスのパテ社が1920年代に製造した手回し式映写機「パテ・ベビー」。つまみを回すと、カタカタという音が聞こえてきます。
「こんな風にちゃんと動作する9.5ミリカメラというのは、ほとんどないはずです」と山本さん。
札幌映像機材博物館の特徴は、ほとんどの展示品が動作し、なおかつ自由に触れるところ。「このパテ・ベビーもフィルムがあれば映写できますよ」と当たり前のように語ります。
フィルムやビデオの歴史とともに歩んできた山本さんにとって、修理やメンテナンスもお手の物。
そして「プロ用の機材というのは、簡単に壊れるようなつくりはしていません。なのでぜひ触れて質感や動きを知ってください」と信頼を寄せます。
アナログ機器の空気感と時代の変遷を味わって
館内に所狭しと展示された資料の中には、見たことも無いようなものがいくつもあります。
ビニールがかけられた機材について伺うと「これはスティーンベックです。ちょっと待ってくださいね」と電源を入れるとフィルムが動き出し、映像が流れはじめました。
この機材は映画の編集用機器で、映像や音声のチェックを行っていたのだそう。
眺めるだけではただの機械ですが、山本さんの話を聞き動く様子を見ると、どのような作業を行っていたのかが分かるとともに、理解がより深まります。
1910年につくられたイギリス製手回し式の35ミリ映写機も現役選手。
こちらも触れて動かし、スクリーンに映像を投射することができます。
フィルムは登別に博物館があった時に「登別伊達時代村」から譲っていただいたものだそう。
ハンドルを回すとメカニカルな機工が動きだし、鎧武者の合戦の様子が映し出されました。
娯楽にニュース、日常風景など、さまざまな時代を写し取ってきた機材たち。
その機材の姿そのものも、歴史を物語る証人なのです。
「朱音珈琲」のネルドリップ珈琲でほっと一息
札幌映像博物館には喫茶店「朱音(あやね)珈琲」を併設しています。
店主の時田朱子さんが自家焙煎するコーヒーを、ネルドリップや水出しで味わえる一軒です。
豆は日替わりで、バランスのいいタイプと酸味の強いタイプの2種類を常に用意。
「初めての方にはどんな味のコーヒーがお好きなのか伺って、おすすめをお伝えしています」と時田さん。
カウンターに並ぶアクセサリーは、時田さんの友人が手作りしたもの。
博物館にお店を構えるようになったきっかけも、山本さんと共通する友人がきっかけだそう。同好の士がじっくりと語れる雰囲気が漂います。
時田さんは長年クラシックギターを演奏しており、音楽が趣味。
好みのレコードを持ち寄り、20時ごろまで聴きあう「レコードナイト」といったイベントも行っています。
お店の自慢の一杯が、手縫いしたネルで丁寧に落とすネルドリップコーヒー。まろやかな舌触りで、映像博物館の風情とも合う深みのある味わいです。
この日注文したのは定番の組み合わせ「ネルドリップ珈琲」500円と「シフォンケーキ」350円。日替わりの豆はバランスのいいブラジル・グラマバレー産をセレクト。
自家焙煎ならではの香ばしさとほんのりとした甘さ、そしてネルドリップで抽出したからこその油分をともなった豊かな味わいが楽しめます。
シフォンケーキは「しっとり」と「ふんわり」の2種類あり、この日はしっとりタイプ。
道産小麦を使ったやわらかくほんのり甘い生地は、一緒に盛られた生クリームや酸味のある自家製のジャムはもちろん、コーヒーとも相性抜群です。
「博物館の中にあるのでなかなか入りづらいかもしれませんが、喫茶だけでも気兼ねなくお立ち寄りください」と時田さん。
コーヒーや音楽、映画など、さまざまな趣味を交えた語らいが楽しめますよ。
スポット概要
名前 | 札幌映像機材博物館 & 朱音珈琲 |
住所 | 札幌市白石区平和通2丁目南1-6 |
電話番号 | 090-8631-7050 |
料金 | 入館無料 |
予約 | 不要 |
時間 | 10:30~17:00(朱音珈琲は11:30~18:00、17:30LO) |
休み | 火・水曜(札幌映像機材博物館、朱音珈琲共通。朱音珈琲の臨時休業日はSNSで発信) |
HP | https://binmuseum.web.fc2.com/(札幌映像機材博物館) https://www.instagram.com/ayane.coffee/(朱音珈琲) |
バス停 | 「平和通1丁目南」下車徒歩2分 |
行き方 | 【地下鉄白石駅から】「地下鉄白石駅」から白23 白石営業所ゆき(のりば③) 【JR白石駅から】「JR白石駅北口」から白23 地下鉄白石駅ゆき(のりば①) ※バス停名からのりば地図が見られます |
※当記事の内容は、2024年10月11日現在の情報です。