お酒を嗜む方であれば、おたるシリーズや鶴沼シリーズのワインを目にしたり、口にしたことがあると思います。
これらを醸造しているのが、小樽に居を構えるワイナリー・北海道ワインです。
国内外で認められる高品質なワインを生み出し続け、2024年には創業50周年も迎えた同社。
その情熱と歩みを2024年に新しくなったワイナリーツアーで楽しく、おいしく堪能してきました!
小樽のまちを見下ろす、北海道を冠したワイナリー
1974(昭和49)年創業の北海道ワインがあるのは小樽市にある毛無山の中腹。
小樽のまちを見下ろす高台で、50年にわたってワインの製造を行っています。
醸造所には入館無料のおたるワインギャラリーを設けており、休憩スペースやショップを用意。
北海道ワインのさまざまな銘柄やワイングッズを販売しています。
有料の試飲も可能で、窓に面したカウンター席では日本海を眺めながらワインが楽しめます。
そして、事前予約制のワイナリーツアーも2024年にグランドオープン!
醸造設備見学やプレミアムワインの試飲ができる「フルコース」(1人6,600円、約90分)や、ワイナリーの説明とヴァーチャルヴィンヤードの視聴、おすすめワイン2杯が楽しめる「ライトコース」(1人2,200円、約30分)など、5種類のコースを用意します。
今回は、なかでも一番おすすめ!というフルコースを体験してきました!
まずは座学で歴史や取り組みを教わります
ワイナリーツアーのスタートは座学から。
まずは歴史やワインづくりへの思い、環境への取り組みなどを学び、知識を深めます。
案内してくれたのはワインギャラリーを担当する竹内さん。
北海道ワインのもつ情熱と、ご自身の会社への想いを存分に語ってくれます。
紹介は多岐にわたり、北海道の地理といったブドウづくりの基礎や、生産しているブドウや農園の紹介、そして2050年にはCO2排出量ゼロを目指すという環境への取り組みなどさまざま。
さらに創業当初から続く鶴沼農場では、AIを活用して自動化するスマート農業の検証をしているそう!
このプロジェクトは北海道大学が中心となり、NTTや豊田通商といった名だたる企業が関わっているのだとか。まさに最先端の農業を実践しています!
作業最中の醸造タンクやろ過装置などを見学
座学を終えたあとは、ギャラリーの地下にある醸造設備を見学です!
扉を開けて最初に目に入るのは、ずらりと並ぶぴかぴかのタンク。
1基で約2万リットル、およそ2万8,000本分のワインが貯蔵でき、このようなステンレスタンクが大小200基以上もあります!
タンクに近づくと、表面を水が流れているのに気づきます。「これは毛無山の地下水で、1年を通じて10~12度の低温。ワインを貯蔵・熟成するのにピッタリで、山の中腹で醸造を行っているのもこの地下水にあるんです」。
そして、北海道ワインの一番の特徴が発酵後に加熱処理をしない生ワインであること。
「国内製造ワインの多くは加熱して殺菌をします。酵母が入っていると再発酵してしまうためです。ただ、ワインのデリケートな風味は熱に弱いんですね。そのため、北海道ワインではペーパーフィルターや非常に細かいメンブランフィルターを使って酵母を取り除き、フレッシュな風味を保っています」と竹内さん。
新鮮なブドウがを凝縮したような香りや甘みは、こうしたこだわりから生み出されているんですね!
そのほか、ブドウの選別機や最新のタンクなどを見た後は、北海道ワインの歴史を紹介するコーナーへ。
「このコーナーをご案内するのが特に好きなんです」と竹内さん。説明にもさらに熱が入ります。
「こちらが創業者の嶌村彰禧(しまむらあきよし)です。ブドウ農家の息子に生まれたのですが別の道へ進み、紳士服の製造業を行っていました。仕事でドイツに渡った際に『気候が似たドイツのブドウなら、北海道でも育てられる』と直感し、浦臼町の耕作放棄地でブドウ栽培を始めたのが北海道ワインのはじまりです。会社の設立は1974年で、46歳からの新たな一歩でした」。
そして「弊社のベストセラー・おたるナイヤガラですが、こちらの誕生には非常にドラマチックな話があるんです」と目を輝かせます。
「当時、農家さんのもとにはナイヤガラブドウが大量に売れ残ってました。本来、食用ブドウはワインには不向きですが、嶌村は”ワインづくりは農業なり”のモットーのもと、農家さんを助けるためにそれらを買い取ったんです。ただ、問題となるのはワインの出来です」。
醸造したワインは屋外で保存していたのですが、冬の寒さでタンクが凍り付いてしまいました。
「春を迎え、諦め半分でタンクを開けたそうです。すると中心部は凍っておらず、しかも風味が凝縮されたワインが出来上がっていたんです」と竹内さん。
こうした偶然も手伝い、1986年に最初のおたるナイヤガラが出荷されました。その甘く飲みやすい口当たりは、今や全国的な支持を受けています。
そんな熱いドラマを聞いた後は、巨大なヴァーチャルヴィンヤードでブドウ畑の四季を追体験。
雪解けから芽吹き、剪定、収穫などワイナリーの一年を凝縮した10分間。畑の空気感が伝わるような美しい映像が繰り広げられていきます。
ヴァーチャルヴィンヤードの観賞後は木樽でのワイン熟成の様子やスパークリングワインの製造工程などを見て、お待ちかねのテイスティングです!
ひんやりとしたカーヴ(貯蔵庫)へ潜入
カーヴ(貯蔵庫)では、道産ミズナラの樽に詰めたワインを保管・熟成。
おたるシリーズでは匂いのつかないステンレスタンクを使いますが、味わいや香りが濃いタイプのワインでは木樽で熟成することで複雑さやうまみを増しているのだそう。
カーヴに併設されたヴィンテージキャビネットでは過去発売した銘柄のファーストヴィンテージ(発売年)のボトルをずらりと展示。
少しラベルが色あせた数々のボトルが、これまでの北海道ワインの歩みを物語ります。
このなかには40年以上保管されているボトルもあるのだとか。もし機会があれば、味わってみたいものです…!
自慢のハイクラスワインをテイスティング!
最後はカーヴを改装したテイスティングルーム・Keller3にてプレミアムワインの試飲タイム。
間接照明で照らされた室内は、上質なワインを味わうのにふさわしい格調高い雰囲気です。
フルコースで味わえるのは赤・白・ロゼなどタイプの異なる4種類。
ワインの個性を引き立たせるリーデル社のグラスに、黄金やルビーに色づいた液体が注がれると、かぐわしい香りがほのかに鼻腔をくすぐります。
66ヶ月瓶内で熟成させた『50周年記念 トラディショナルメソッド北海道 – 鶴沼収穫』(一番左)や国際コンクールで金賞を受賞した『おたるゲヴュルツトラミネール2019』(一番右)など、北海道ワインの中でも特にハイクラスな4つのワイン。
果実や花を思わせる芳香や、何層にも重なる深みのある味わいを存分に堪能し、大満足のうちにツアーは終了です。
数種類のワインを飲み比べることって、なかなか無いと思います。とくに高級なワインだとなおさら!
プレミアムな体験がいっぱいのツアーで、知識や経験を深めてみてはいかがでしょう?
施設概要
名前 | 北海道ワイン ワイナリーツアー |
住所 | 小樽市朝里川温泉1丁目130 |
電話番号 | 0134-34-2187 |
ツアー料金 | フルコース:6,600円/ミディアムコース:5,500円/ライトコース:2,200円/テクニカルコース:8,800円/ワイナリーランチ:13,000円~ |
営業時間 | 9:00~17:00 |
休み | 無休 |
HP | https://www.hokkaidowine.com/ |
行き方 | JR小樽駅から車で約23分 |
ちなみに…北海道ワインを味わうなら「小樽バイン」もおすすめ♪
小樽の観光名所である北のウォール街には、旧北海道銀行本店をリノベーションしたイタリアンレストラン・小樽バインがあります。
メニューには近隣の食材を使ったメニューがそろうほか、北海道ワインも多数用意!
北海道ワインの契約農家の中でも、特に高品質なブドウを生産する3名。
その名前を冠した「北の匠シリーズ 飲み比べセット」1,730円では、ブドウごとの味の違いを確かめることもできます。
そして、ピザやパスタ、チーズなどとのマリアージュを楽しめば、新たな味わいを発見できるかも!
ワインショップも併設しており、北海道ワインや道産ワインを多数販売しています。
レストランを利用せずとも立ち寄れるので、小樽観光の合間に覗いてみてはいかがでしょう?
\小樽バインについてはこちらの記事で!/
「小樽のグルメ」と言われてまず思い浮かぶのは、お寿司などの海鮮系だと思います。ただ小樽には、石造りの蔵やレトロな建物をいかしたレストランやカフェも沢山あるんです。中でも、「小樽バイン」は築100年以上の建物をリノベーションしたワイ[…]
※当記事の内容は2024年9月27日の内容です